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エコな車について

2020年1月20日

究極のエコカーは、①車の効率がエコでないといけないし、②使用する燃料もエコでないといけないが、③燃料を供給する世の中のシステムもエコでなければならない!

ところが、①になるんだという方向だけは決まっていますが、②の供給方法が固まっておらず、③が追いついていません。

クルマの効率について(エコカーの可能性)

ソーラーカーは実用化できるか

ソーラーカーとは、太陽電池で発電した電気でモーターを動かして走る車です。

ソーラーカーという名前は一般的ですが、車は一般的ではありません。

それは、実用化に至っていないからなんですが、何が実用化を阻んでいるのでしょう?

太陽電池

原理の発見と発明は、共に19世期中頃だったようです。

その後、実用的な太陽電池が本格的に作られるようになるまで、1974年の石油ショックを待たねばなりませんでした。

必要は発明の母、ということですね。

太陽電池の原理は、電子に光のエネルギーを吸収させて電力を取り出すpn接合型、光によって励起された二酸化チタンに吸着された色素中の電子を電流として取り出す色素増感型の二種類があるそうです。

性能は?

では、肝心のソーラーカーの性能は、というと、これは太陽電池の発電能力と、回生ブレーキ(減速していく時に電気を取り出す機構)、そして空気抵抗などの抵抗値の大きさに依るところが大きいようです。
 

 太陽を追え!

 テレビでたまに流れるソーラーカーレースを見ていると、雨が降ったり夜だとレースしていません。

つまり、太陽が出てないと走れないということですね…

さらに、早朝のレース開始前に太陽電池パネルを太陽に向けていたりします。

太陽電池も化学反応と関係していて、パネルを温めておくことが良いみたいです。

さらに、太陽電池表面に水滴が溜まると、晴れた時にそれがレンズの役割を果たして、太陽電池を焦がしてしまうこともあります。

はっきり言って、面倒ですね!

ただ、言えそうなことは、もしソーラーカーが実際に世の中で走るようになった時は、気象予報会社が儲かる、ということです。

(パネルに雨水が付くことさえ嫌うんですし、晴れてないと走れないですからね…)

ソーラーカーが実際に走る可能性は?

 実際にソーラーカーは普及するでしょうか?

  普及の条件
  •   発電効率が上がる必要
  •   コスト低下
  •   天気に左右されない仕組みづくり

まだあるかもしれませんが、最低限、これをクリアしないと普及は難しそうです。

ソーラーカーは考え方に無理がある

おそらく、ですが、ソーラーカーのコンセプトは実用性からはかなり離れていると思います。

それは何故か、というと、スタンドアローンな環境なら太陽電池だけで走ろう、というのはわかりますが、現行のガソリン車であっても、燃料はスタンドまで補給しに行かねばならない前提で車が使われています。

ソーラーカーも、太陽光だけで走る、というのはナンセンスだと言えるからです。

 ソーラー発電を使うなら

上記の理由から、太陽電池を利用するなら、電気自動車の補助電源として、という方が現実的だと思います。

と言っても、管理が大変そうです。

こまめに洗車しないと、発電効率が落ちるかもしれませんし、パネルを焦がすわけにもいかないですから、こまめに拭いてあげないといけません。

あり得そうなのは、やはり発電方法の一つとして、メガソーラーで発電した電気を一般家庭に届け、車のユーザーは家庭用コンセント経由で充電して電気自動車に乗る、というパターンです。

電気自動車

続いて、電気自動車についてです。


電気自動車の性能の肝は、蓄電池、駆動モーター、インバーター、ぞれぞれの効率となりそうです。

 蓄電池

現在販売されている電気自動車は、電池のみで300キロは走れます。

現在、バッテリーのみの航続距離は日産リーフで350〜570km、テスラ社のモデル3で409〜560kmとなっています。

電池なので自己放電もします。

乗らないと勝手に航続距離が落ちます。

それを踏まえた上で、実際にこの電池でどれくらい走れるか、それは、蓄電池の性能にかかってきます。

 駆動モーター

モーターの電気効率は80〜90%と言われています。

ガソリンエンジンの40%と比べると高いですね

 インバーター

電気自動車は電気を昇圧したり降圧したりしながら利用します。

その変換効率は、70~80%程度だそうです。

しかし、ここで重大な点があります。

まず、発電所で電気を起こすときの発電効率は、50%くらい、そこから送電ロスが5〜10%と言われています。

家庭に届くまでに元のエネルギーの40〜45%になっています。

そのロスを勘案すると、実際の効率は高ければ30%程度、低ければ22%程度しかありません。

では、ガソリンエンジン車の場合はどうでしょう?

原油をガソリンに精製する時に10%ロス、ガソリンの輸送で2%ロスがでた、と考えると、まず車のエンジンに届くまでで80%ほどになっています。

そこからエンジンの熱効率40%をかけると、32%になります

社会全体で見たトータルの効率は、ガソリンエンジン車の方が高い、といえます。

これは考えものですね…

今後の技術革新で電気自動車のエネルギー効率は上がっていくのでしょうが、では車の電動化を後押ししているのは一体何なのか?

この項は後で説明します。

 水素自動車

 水素の高発熱量は群を抜いて高く(燃えたときのエネルギー量が大きい)、ガソリンの3倍ほどになります。

環境にも優しく、燃焼しても水になるだけで、二酸化炭素が発生しません。

その代わり、コストがかかります。

水素カーは価格が1台700万円もします。

水素ステーションも整備しないといけません。

さらに、水素の原価は現状ではガソリンの1.5〜2倍です。

※ 水素自動車の原価については「水素・燃料電池(自動車)プロジェクト」を参照しています
 http://www.jari.or.jp/portals/0/jhfc/data/pdf/stake.pdf

素晴らしい特徴を備えていますが、普及までにはまだ時間がかかるでしょう。

究極のエコとは何か?

では、エコ、という点で見た場合、究極のエコってなんでしょう?

それは、

  • 車に乗らないこと
  • (許せる範囲で)効率の良い方法で車を動かすこと

のどちらかです。

効率という点では、無駄な車をなくすという意味で車をシェアするという方向も一つですが、これは車の使い方の話になります。

そもそも、どうしてエコが叫ばれるの?

エコが叫ばれるのには理由があります。

地球環境問題の進展にあります。

個人1人ではもちろんのこと、国家1つだけでは対処できない、全世界的な課題として、地球環境問題が持ち上がってきたこと、さらに、現実の環境悪化としての被害が出始めていることが、エコが叫ばれる要因といえます。

車に関して言えば、内燃機関の方が今のところ経済全体の効率は良さそうですが、全世界のトレンドは電動化に向かっています。

なんででしょう?

これは、各国の思惑としか言えない部分があります。

ヨーロッパ
  基本的にエネルギー資源が乏しい
  フランス
   原発大国=電気自動車はありがたい
   ガソリンエンジンを2040年までに全廃する、と表明
  ドイツ
   環境問題に熱心
    二酸化炭素を出したくない
    いざとなれば、隣国のフランスから電気を買ってくることができる
    なので電動化に賛成
 
 中国
  自動車需要増大
  その全てに行き渡らせるガソリンがない
  (あっても輸出してしまうので、やっぱり行き渡らない)
  大気汚染を回避したい
  今から先進国企業に並ぶエンジンを作るには時間がかかりすぎる
  まだ開発が簡単な電気自動車の方が勝てるかもしれない
  
 日本
  エネルギー資源がない
  電気も輸入できない
  従来どおり原油を輸入した方が良いのでは?
  電気自動車に集中する必然性はそもそもない
  ハイブリッド車の技術がある

 アメリカ
  資源が豊富
  ガソリンが安い
  国土が広くてガソリン車の方が適している地域も多い
  そこまで電気自動車に集中する必要はないが、情報産業が強いので、そちらの関係から電気自動車のシステム開発に乗り出している

自動車を設計して生産しているメーカーを持つ国は、アメリカ、日本、ドイツ、フランス、中国、韓国、と、上記の国にほぼ重なる!

なんだ、自分の国の事情がかなり影響しているじゃないか、となりますね。

これは仕方ないとしても、じゃあ、南米の平原で電気自動車なの?とか、アフリカの奥地で電気自動車なの?と考えると、一部の都合で全体のルールが変わったら困る地域もありそうです。

電気自動車とガソリンエンジン車は、上手に棲み分けていくと思いますけど… 

参考

ドイツの太陽光発電事情

環境問題に熱心な国、と言えばドイツです。

ドイツの電力構成を見てみると、なんと、今や40%が再生可能エネルギーです。

独Fraunhofer ISEより

日経XTECHよりhttps://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/news/16/010711849/

さらに、興味深いレポートがありました。

「ドイツはフランスから電力を輸入している?」を検証する
  https://hikaku-osaka.jp/_userdata/doitu.pdf

従来、ドイツへの批判として、
「再生可能エネルギーを導入しているけれど、足りない分はフランスの原発で発電した電気を輸入しているじゃないか」

というものがありました。

ところが、このレポートを読むと、むしろエネルギー輸出国になっている!

しかし、実は発電量が増えたのは裏の事情があったからで、喜ばしいことではなかった模様です。

それは、何か、というと…実はドイツは2022年までに原発全廃を掲げています。

そのため、再生可能エネルギーの割合を増加させた結果、電力供給網の整備の遅れの関係でコストが増大してしまって、結局、天然ガス発電や、石炭火力発電に頼らざるを得なくなってしまったのです。

確かにエネルギー自給できるようになったけれど、それは本来の目標からそれた結果であり、しかも、そもそも目標にしていた二酸化炭素排出削減が、化石燃料を使った発電を増やしたがためにむしろ増加に転じてしまった、という皮肉な結果となりました。

環境問題のために掲げた目標のために、逆に環境を悪化させてしまった、のです

環境にもよく、エネルギー効率も良い世界

 ここからはもう空想の世界なのですが、地球環境への良さだけで考えると、林業とのリンクだと私は思います。

 林業とのリンク

  1. 牧畜における牧草地のように、森林を管理する
  2. 森林を育て、木を伐採し、その木を使ってバイオマス発電を行う
  3. バイオマス発電で作った電気で車を動かす

というサイクルを実現する、というものです。

大変非効率かもしれませんが、これが一番環境に良さそうです。

問題は、大規模化できないこと、木が生えない地域ではできないこと、木が育つまで時間がかかること、でしょう。

効率性という点では、化石エネルギーの効率を上げてうまく使う

エンジンの熱効率は40%、これを50%以上に上げる技術を開発する

これもエコに繋がります。

今ある社会システムも壊さないし、なんだか問題をとりあえず軟着陸させられそうですよね。

ソーラーパネルをいたるところに置く

あるいは、太陽光発電を推進する、という方向性もあるでしょう。

ただし、太陽電池の発電効率は高くても20%です。

物質を化学反応させて電気を作る

いっそのこと、でっかい電池を作ってしまう、という手もあります。

金属を化学反応させて、電気を取り出す、というものです。

マグネシウム電池の可能性

注目されている技術に、マグネシウム電池があります。

なんでマグネシウムか、というと、

  • 地球上に大量にある物質
  • 燃えても酸化マグネシウムになるだけで二酸化炭素が出ない
  • 熱量も十分ある(水素の10倍くらいある)
  • 物質として安定している

という特徴があるからです。

この研究は夢があると私は思います。

マグネシウム・エネルギー社会の到来(PDFが開きます)   
公益財団法人本田財団HPより

  小型分散型発電所を大量に作る

送電ロス回避のために、小型の発電所をあちこちに作る、というのも手段の一つです。

小型水力
小型火力(ただし条件あり)

ただし、これは自家発電程度で行うレベルにしか普及しないと思います。

何故かというと、小水力が置ける場所は限られるし、火力も用地確保に問題がありそうだからです。     

まとめ 抜本的な策はない!

こうして見ていくと、なんでも丸く収まってくれる解決策は無いようです。

ただ、理想をいえば…

森林資源が豊富な日本においては、可能な限り、牧草地の管理のように、森林を育成し、燃料として、電気を起こす

これが一番のエコだ、と個人的に思うのですが…

環境問題は難しいので、うまく言えませんが…

現実として、映画『風の谷のナウシカ』の世界のように、人間は自然をコントロールするのではなく共生して生きていくのだ、という考え方は一つの理想だと思います。

でも実際に、今生きている人々や世界に、全世界がナウシカのように高い理想を持ちながら、(腐海のように過酷ではなくとも)過酷な混沌の中で生きろ、とは言っても良いけど強制はしてはいけない、とも思います。

少なくとも、私だったら、それは無理だ、と言ってギブアップします。

あまりにも過酷すぎます。

経済的利益がなければ、おそらく本当のエコには流れていかないのではないか?

とするなら、効率の高いシステムが、世の中の経済問題を解決してくれて、その結果、環境問題を最終的に解決してくれるのを信じて待つしかない、と思います(今まで見てきたような矛盾が世界にいっぱいあることからも、それは明らかです)

そして、効率化のための技術革新には努力を惜しんではいけません。

当分の間、模索が続きそうです。

走りながら、考えましょう走りながら、考えましょう

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