今回は、軽油とディーゼル車およびディーゼルエンジンについてです。
日本においてはディーゼル車は大型車などに目立ちます。
ところが、海外では普通車にディーゼルエンジンが搭載されている場合が多くあります。
両者を分けた違いはなんなのかも含めて検証します。
Contents
軽油の特徴
軽油という名前は、重油からきてます。
「重い」の反対、ということみたいですね。
英語ではlight oilで、そのままの訳になります。
(重油はheavy oilよりはfuel oilと呼ばれることが多い)
日本の場合、軽油の消費量の95%が自動車、船舶、鉄道で消費されています。
(ガソリンエンジンが大型車に向かないのは、エンジンのそもそもの特性がトラックなどの使用目的には不適なことによる)
日本は、生成される軽油の量に比べて消費量が少なく、軽油は海外に輸出されています。
なお、軽油に求められる性能は、
- 不純物含有量の少なさ
- 適度な粘度
- セタン価で示される着火性の良さ
- 環境対策のため、硫黄分の少なさ
が重要です。
なお、重油には寒冷地用軽油など、いくつかの種類があります。
何故かというと、温度により軽油の流動点(凝固する直前の温度)が違うためで、一般的な軽油は冬場に凍ってしまいます。
そのため、スタンドでも季節ごとにその種類を入れ替えています。
もし暖かい地域から寒冷地へ旅行する時は、途中で燃料を空にして、寒冷地用の軽油を給油した方がいいみたいです。
ディーゼル車に乗る時は、ちょっと頭に入れておきましょう。
価格
では、実際使うとなると、その価格が気になります。
ちなみに、2020年1月14日の小売価格は、
ガソリン 151.1 円
軽油 131.3 円
でした。
精製段階での原価はガソリンと同じくらい
実は、原油から生成された段階では、軽油とガソリンの値段の差はほとんどありません。
価格に差が出る原因は、税金のかかり方に原因があります。
軽油は税金が安い
ガソリンと軽油では、納税義務者が違います。
ガソリン 納税義務者はメーカー
軽油 納税義務者は消費者
そのため、課税のタイミングが違います。
ガソリンがいわゆるガソリン税に対しても消費税が二重にかかるのに対し(ガソリン税はいわば、ガソリン製造時のコストとして原価に組み込まれるものとしての扱い)軽油は軽油が販売された時点で軽油税が課されています。
なので、
税込みのガソリンに購入時にさらに税金を払うガソリン
税のかかっていない状態の軽油に購入時に税金を払う軽油
というイメージです。
軽油の値段の内訳
軽油
軽油引取税+(石油税+軽油本体価格)×消費税
ガソリン
(揮発油税+地方揮発油税+石油税+ガソリン本体価格)×消費税
では、気になる税率は、というと、
軽油引取税 本則15円、暫定税率17.1円 トータルで32.1円
石油税 2.8円
石油税は温暖化対策税として1リットルあたり2.80円(H28年4月〜)課税されます
ガソリンの場合、
揮発油税本則24.3円、暫定税率24.3円 トータルで48.6円
地方揮発油税本則4.4円、暫定税率0.8円 トータルで5.2円
石油税 2.8円
また、税金のかかり方が違います。
仮に、軽油とガソリンの本体価格が同じだっとして、Xとしておきます
軽油 32.1 + (2.8 + X)× 1.1
35.18 + 1.1X
ガソリン (48.6 + 5.2 + 2.8 + X)× 1.1
62.26 + 1.1X
62.26 - 35.18 = 27.08
その差は1リットルあたり約27円!
これでは軽油が安いのも納得ですね。
ディーゼル車の特徴
では、ディーゼル車の特徴ってなんでしょう?
ディーゼル車の割合・普及状況
ディーゼル車の割合は、普通乗用・小型車では5パーセント程度です。
一方、トラックやバスでは、ほとんどディーゼルが採用されているのが現状です。
トラックやバスでは、耐久性(中には100万キロ超走っている車もある)や燃費性能や壊れにくさ、といったことからも、ディーゼルが適しています
ディーゼルの長所と短所
長所
- 燃料が安い
- 低速時にトルクがある
- 長距離運転時に疲れにくい
- 着火に電気が不要
- 熱効率が良い結果、燃費に優れている
- 構造がガソリンエンジンより簡単
短所
- 排ガスの問題
- 大きい
- 重い
- 自然吸気エンジンの場合、同排気量のガソリンエンジンと比較して、トルクが低いのでターボがないとガソリン車には負ける
- 補機類が必要で、エンジンがガソリンエンジン に比べて高くなる
- 騒音がうるさい
高速で走るよりは低速で走る分野で、しかも重いものを運んだりする用途にディーゼルはうってつけである、ということですね
海外でのディーゼル
ヨーロッパでは乗用車の半数がディーゼル車です。
これは燃料課税の法制度の違いによるところが大きく、また各国での環境対策への考え方の違いも反映されているようです。
確かに、アメリカのようにガソリンが安い国にとっては、ディーゼル車を選択するメリットは維持コストの面からはおそらく存在しません。
ディーゼルエンジンの構造上の特徴
構造上の特徴
点火プラグがない
燃料は圧縮空気の温度で自己発火する
軽油は300度で発火、ガソリンは500度前後で発火する
グロープラグなどの余熱機構がある
構造上、点火プラグがなく、圧縮空気の温度で燃料を発火させるが、空気の温度が低い始動時などは燃料が発火しないので、空気を余熱機構で温める必要がある
24ボルト
始動の方法はガソリンエンジン同様、スターターモーターがクランクシャフトを回すことによって行われるが、エンジンの圧縮比が高いため、クランクシャフトを回すのに力が必要なため、スターターモーターも大型化する必要があるため、電圧として24ボルトが必要
回転制御の違い
ガソリンエンジンと違う点は、燃料の発火点の違いからくる構造の違い、と言えますが、他にも、エンジン回転の制御の仕方も違います
ガソリンエンジン
エンジン回転を吸入空気量で調整する
空気量の調整はスロットルバルブで行う
ディーゼルエンジン
エンジン回転を圧縮空気に噴射する燃料の量とタイミングで調整する
ディーゼルの場合、スロットルバルブ(空気を絞る弁)がありません
スロットルバルブがない、ということは、シリンダーの圧力が下がらない、ということ
ふさぐ蓋がないから気圧が下がらない、というイメージ
負圧(ピストンの下降で低い空気圧が発生する。低い気圧)で空気を呼び込む、というのが吸気のイメージです
圧力は高いところから低いところに流れるので、大気圧より低い方に流れていきます
ディーゼルの場合、このスロットルバルブがないので、いわば密閉してくれるものがなく、ピストンが下がっても気圧が下がらないです
そのため、入ってくる空気が少なくなってしまう!
負圧が少なくて済む場合はまだいいとして、大量に空気が必要な時に困る
ですが、現在のディーゼル車は、ターボがついています
これは、自然吸気の場合、同排気量のガソリンエンジンと比較して、トルクが低いという弱点を補うためです
ターボで空気を送り込むので、この弱点は解消されます
そのため、自動車用のディーゼルエンジンにはターボが必要不可欠です
今後のディーゼル
- エコカーとしてのディーゼル
- そもそも燃費性能が良い
- そもそもディーゼルは燃えにくいものでも動く(食用油など)
- 日本国内では安い軽油を使える
なんと、ディーゼルは食用油でも動く! 驚きですね。
機械としては燃料の幅が広いので、燃料の改良があっても対応出来そうです。
クリーンディーゼルで低いNOx エネルギー効率、という点でも、原油を精製すると必ず軽油はできるのに需要がないから輸出している、という点でも、今後、ディーゼルの活用が増えることが望まれるでしょう。
残る問題
問題は車の価格です。
現状ではガソリン車よりも30万円は高いです。
これはエンジンの価格差となります。
いくら高い、と言っても、電気自動車よりは安いですよね。
軽油の価格を考えれば、車の価格差が30万円として、
300000 ÷ 20 = 15000
1万5000リットル入れれば元が取れます。
マツダCXー3(ディーゼル)の燃費がリッター18キロ〜21キロくらいですので、18キロとして計算してみると、
15000 × 18 = 270000
あれれ、27万キロ走らないと元が取れないですね…
ですが、最新のディーゼル車ならば税制優遇もありますので、トータルで見ればコスト的には最後はガソリン車とそんなに変わらない、と言えるでしょう。
まとめ
ディーゼルには燃費という点でも環境という点でも可能性があります。
今後も車のシェアはこのまま低いままなのか、それともヨーロッパのように普及していくのか?
それを左右するのは、もはや税制のみです。
税制が変われば、劇的にシェアが変わる可能性もあります。
今後の動向から目が離せません。
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