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クルマのブログ

ユーザー車検から学ぶべきこと

2020年1月16日

ユーザー車検についての考察です。

同業者である車屋さんでも「ユーザー車検は良くない」という決めつけで入るのが常になっているのが、このユーザー車検です。

実際はどうなんでしょう?

結論としては、ユーザー車検は、車検専業ゆえの利点を活かした適切な活用がオススメ

ということになります。

ユーザー車検の安さの理由

分担制

一台につき必ず複数人で対処している。


 

私が働いていた工場の場合、基本的に担当者が最初から最後まで作業を担当していました。

そして、間に合わない場合に誰かに手伝ってもらう、という体勢でした。

これはこれでいいのかもしれませんが、ただ情報を共有するのに時間がかかったり、二度手間になったりするデメリットがあります。

分担性の場合、作業が決まっているので、熟練により作業スピードも上がり、結果として1台を処理するスピードが上がります。

パート・アルバイトの活用

人件費の抑制につながります。

マニュアル化

マニュアルがあることで、比較的誰が作業してもバラツキがなくなります。

時間の節約にもなります。

経営資源の集中

引き取りなし、入庫のみ対応

引き取りに行く時間は、ひどい時には往復1時間はかかったことがあります。

その点、入庫してくるのを待っているだけならば、時間と労力の節約になります。

整備士が整備の仕事に専念できる環境づくり

私が働いていた工場では、雑用がちょくちょく入ってきました。

そのために手を止めて、また再開して、ということが何度もあり、短時間で作業を終えられないことになったりしました。

短時間で終われば、リフトを1台空けることができますし、メリットが大きくなります。

一括仕入れ

スケールメリットを活かした一括仕入れにより、低価格を実現できます。

また、主な部品の在庫を持つことで、待ち時間を減らし、すぐの対応を実現できます。

つまるところ、安さのヒミツは、時間と費用の節約の徹底です。

注意)他のユーザー車検業者が同じ仕組みを導入しているかは確認できていません

ユーザー車検の問題点

  • 書類だけ通すことになりかねないか(必要な整備がされないのではないか)
        つまり、必要な整備がされない、という不安
  • パートアルバイトの活用による弊害
        責任を持って作業してくれるのか、という不安
  • 見落としへの不安、安心感や信頼性といったもの

これらが一番ネックになります。

現在はユーザー車検も様々な業者があり、ユーザー車検への考え方も違っているでしょう。

そのため、どうしても上記のような不安感は拭い去れない、それがユーザー車検の抱える問題点だ、と言えるでしょう。

おそらく、今後もユーザー車検の業者さんにとっては、この悪いイメージを払拭していくことが大きな仕事となっていくはずです。

ユーザー車検が省いているもの、追求するもの

ユーザー車検が省いているものは、

  • 時間=人件費
  • 部品代

と言えるでしょう。そして、結果として、

効率性の追求です。
  

ユーザー車検の誕生経緯

『日本一小さな整備工場が業界を動かしたとき 車検の歴史を変えた男』 

この本に詳しく書かれています。

ユーザー車検が誕生した背景

昭和58年9月、神戸市で「全国ユーザー車検友の会」が発足
http://www.reshi.net/syaken/2007/03/post_141.html

  発足当初は不明であるが、現在の運営方針は、
 「車検体験コース」アドバイザーがユーザー車検の指導を行い、車検にも同行する
 「お忙しい方のコース」友の会が点検、車検を引き受ける
 両コースともに、点検指導料などの料金を取る
  という方針で運営されています。

  実際は、自前の設備も持たず、整備もせず、陸運局や指定工場(民間車検場)に車を持ち込むだけだった

  その後、ユーザー車検代行業は増加していった

と本には書かれています

(ユーザー車検、と名前はついているが、実際は今日の意味でいうところのユーザー車検ではなく、車検代行)

 道路運送車両法改正により前検査・後整備(通常は前整備・後検査、整備した車を検査に持ち込む)が可能になったこと、整備項目が半分に減らされたこと

この本の著者、ホリデー車検代表取締役社長の松川陽氏が、全国初のユーザー車検専門会社設立へと動き出す要因となったのは、この2つの出来事が要因だったようです。

本によれば、車検代行業者は代行料として、当時のお金で2万円で車検を通していたそうですが、その後、整備を外注に出して車検を通す団体も現れ、中には5万円ほど料金として取っていたようです。

まさに、この団体のような代行業者の行為は、書類だけ通している車検だったのですが、それに対する危機感が、現在のユーザー車検専門会社である同社設立に至る原動力となったようです。

(思ったのですが、ユーザーが車を持ち込んでいるのはディーラーでも工場でも同じです。

しかも、ユーザー車検だって指定工場なのだとしたら、自前で車検ができるわけですから、ディスカウント店、ただし全く何もしないわけではないディスカウント店、と言うことができるんじゃないでしょうか?

「ユーザー車検」をこの「書類の処理だけで終わらせる」と言う悪い意味で使っていますが、その悪いイメージをそのままディスカウント店としてのユーザー車検に慣習的にかぶせている、と言えます)

実際見た事例

さて、実際の中身が重要です。

私がユーザー車検に出されていた車を整備した時に一番気にかかった事例をお話しします。

たまたまその車は、ブレーキフルードが交換されていませんでした。

普通、2年に1度必ず交換しなければいけないものです。

しかし、フルードのリザーバタンクを見ると、真っ黒。

これは、交換されていない証です。

これを放っておくと、まずブレーキが効きにくくなります。

そして、ブレーキのシリンダーが錆び付いてしまう恐れもあります。

ブレーキが効きにくくなっていく結果、制動距離が伸びて、事故になりかねません。

 
その車がたまたまだったのか、事業所によって方針が違っているからなのか、理由は定かではありません…

車検に対するユーザーのニーズの反映の一つ

 ユーザー車検は、

  • 車検の内容がとにかく不透明でわかりにくい
  • 車検の費用を節約したい

というニーズが背景にあります。

学ぶべき点として、まず、

車検って何をするの?という不透明感に対する答えを出しているところです

具体的には、

  • 立ち合いなどにより内容を知らせている
  • 項目別に値段設定されている

これならば、自ら選択することができるので、納得を得られますよね?

必要ないところまで勝手に部品交換されて、高額請求されては、ユーザーとしては困ります。

交換しなければならない部品は別としても、交換した方がいい(必須ではない)、交換まで余裕がある(しなくてもいい)、交換の必要は全くない、まで、段階があるはずです。

また、昔よりも車が壊れにくくなってきています。

ユーザーへのごまかしがない分、「必要ないことはしない」は、公正なやり方だ、と言えるでしょう。

これは実際の話ですが、リース車両は委託された側には利益が残らないやり方をしています。

整備する工場に利益が残らないくらい低い値段で入ってきます。

整備のやり方も手抜きになります(やればやるほど損する構造だからです)

利益にならないから、ざっと見るだけであとはほったらかし、それが現実です。

それでもリース車両は世の中にたくさん走っています。

リースの対象は大抵法人です。

リース車は廃車になるまでは乗らない、ということがあるにしても、これが実態です。

これだって、必要最低限のことしかしていないのだから、整備に関しては基本的にユーザー車検と変わりないですよね?

ならば、あとはただ、イメージの問題です。

実際の作業についてのユーザーの不満は、どの工場に出そうがついて回る問題です。

ならば、上手いと言われる工場を探す一環として、ユーザー車検を見た方がいい

その上で、作業内容に納得できるのならば、あとは車の管理の仕方を工夫すれば、ユーザー車検の利用でうまくコストを圧縮できるはずです。

あとは、一業者としてのユーザー車検側の問題であって、作業をきちんとこなしているかどうか、と言う点に尽きます。

ユーザー車検は、従来の車検が高すぎる、不透明である、という問題に対するアンチテーゼだ、と言えます。

ユーザーはどっちを選べばいいのか

では、一般の車ユーザーは、車検でどっちを選んだらいいのでしょう?

車検に求められるのは、

  • 安全性(車に対する安心)
  • 納得(内容に対する安心)
  • スピード
  • 費用の安さ

と言えそうです。

あとは価値観の問題なのですが、この項目のどれに価値を置くか、そして、一つでも認められない不安な要素があるか、という基準で選んでみたらいかがでしょう?

まずは、必ずユーザー車検のデメリットを個人で見極めること。

その上で、車の年式、傷み具合、定期点検への出し方、これらを考慮して判断されることをオススメします。

私ならばこうする、というオススメの方法

もし私がユーザー車検を利用するならば、以下の原則で出します。

 法定12ヶ月点検には必ず出す これはディーラーか民間整備工場に出す
 できれば、その際に下回りだけスチーム洗浄してもらう
(塩カルを撒かない地域は下回り洗浄はなくてもよい。また、スチーム洗浄機を持ってない工場に出す場合でも、あとでスタンドなどで下回りスチーム洗浄して貰えば良い。エンジンルームの洗浄は必須ではない)
 

  必ず作業着手前の見積もりか確認の電話をもらい、整備後はアドバイスをもらうこと
 車検だけユーザー車検に出す
その際、ブレーキフルードの交換だけは絶対にしてもらうこと
  
これでトラブルはほぼ抑えられるが、

 トラブルが起きた場合は、ユーザー車検の保証範囲内で対処できない場合、定期点検に出している工場に出す
 
 新車から3年後の最初の車検の場合、100パーセントユーザー車検で構わないでしょう
 あとは、乗り方、傷み方にもよります
 なお、年式が10年以上前ならば、ユーザー車検には出さない方が無難かもしれません
 
 
 ユーザー車検を利用される際は、車検専業ゆえの利点を活かした活用法をオススメします
 
 整備工場が学ぶ点はこちら

ユーザー車検から整備工場が学ぶ点

選択肢が増えることは悪いことではありません。ユーザーに利益になるやり方を考えるべきです

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