ズバリ、こんな時です
ズバリ、水抜き剤は、最近の車の場合、走行中にガタガタとエンジンの調子が悪くなる時に使用する意味があります。
それ以外では、それほど意味はなくなった、と言えるでしょう。
どんな時使う?
この走行中のガタガタ、というのは、普通に走っていたのに、急にエンジンの出力が落ちて、まるでガス欠みたいになった場合のことです。
こういう状況では、しばらくするとエンジンの調子が元に戻り、また悪くなり、を繰り返す場合があります
水抜き剤とは
水抜き剤とは、燃料タンクの水を除去する(抜く)ためのものです。
燃料タンクはその名の通り、燃料を一時貯蔵するためのタンクなのですが、水が混入したり自然に溜まったりするもので、その水はタンクを分解するか燃料を排出しない限り、人力で取り去るのはほぼ不可能です。
いわば、外科手術ができない病気に対して飲み薬を飲むようなものです。
主な成分
水抜き剤の成分は、イソプロピルアルコールという物質です。
イソプロパノール、IPAとも呼ばれる、アルコールの一種です。
医療機関で消毒用に使われたり、光学ピックアップレンズクリーナーのクリーニング液、コンタクトレンズの洗浄液にも利用されています。
水にもガソリンにも軽油にも溶ける、安価である、油脂類をよく溶かす、速乾性である、などの性質があります。
また、アルコール類は、濃度が高いとゴムや樹脂(アクリル樹脂)を膨潤させて劣化させるので、使用時の濃度は指定範囲を守る必要があります。
使い方
水抜き剤は、給油口から入れるだけです
効果を高めるためには、燃料タンクが空っぽの状態で水抜き剤を入れ、それから燃料を入れる方がいいでしょう。
なお、使用量は水抜き剤のボトルに記載されていますので、それを守ってください。
入れすぎると、燃料ホースなどの劣化を早めますのでご注意ください。
昔ほど使用する意味は減った
水抜き剤は、今の車では使用する意味は減りました。
何故か、というと、樹脂製の燃料タンクが増えたためです。
昔の車は金属製の燃料タンクでした。
ところが、今の車は、製造のしやすや、デザインのしやすさ、価格、軽量化の面から樹脂製の燃料タンクを採用することが多くなりました。
樹脂、つまりプラスチックですね。
なので、燃料タンクとしては水の影響を受けなくなりました(サビない)
そもそも、自動車の構造からいって、タンクの底から燃料を汲み上げるようになっているので、水が溜まっても燃料と一緒に吸い出されて燃焼されるもののはずですよね。
なので、溜まった水がごくごく少量ならば本来、そのまま燃料と混じったまま送られて、燃焼室で蒸発するはずです。
ということは、燃料タンクで水がたまることで問題が起こる場合、というのは、
- タンクがさびてしまう場合(タンクが鉄製、古い車など)
そのサビで燃料フィルターを詰まらせるので良くない、タンクが弱くなるので良くない、燃料パイプをサビさせるので良くない
- 吸い上がる水が多すぎる場合(水が入ることで空気と燃料の比率がおかしくなるために燃焼に悪影響を与えるくらいの量の場合)
そのシリンダーだけ一瞬、燃焼に不具合、エンジン不調
- 冬に水分が凍結することで、燃料パイプなどで燃料が送られなくなる
ということになります。
水はたまるもの
水がタンクにたまってしまう原因は以下の場合です
- ガソリンスタンド
スタンドの燃料タンクから給油時に水が車のタンクに入り込む
- 結露
タンク内部での結露
- 燃料キャップ
燃料キャップから外気が入り込み、結露を起こさせる場合
結露とは?
結露とはどんな現象か、おさらいします。
結露とは
固体物質の表面、または内部で、空気中の水蒸気が凝縮する現象
身近な例では、気温の下がった冬に窓ガラスにできる結露があります。
空気中には水分が含まれています(湿度)
また、温度によって空気中に含むことが出来る水分は決まります(飽和水蒸気量)
気温(℃) | 飽和水蒸気量(g/m3) |
50 | 82.8 |
40 | 51.1 |
35 | 39.6 |
30 | 30.3 |
25 | 23.0 |
20 | 17.2 |
15 | 12.8 |
10 | 9.39 |
5 | 6.79 |
0 | 4.85 |
-5 | 3.24 |
-10 | 2.14 |
-20 | 0.882 |
-30 | 0.338 |
-40 | 0.119 |
-50 | 0.0381 |
ウィキペディアより作成
ここで、空気は1立方メートル当たり、気温20度では17.2グラムまで水分を含むことができますが、気温0度になると4.85グラムになりますので、湿度100パーセントの環境なら約12.5グラムは空気中には存在できず、液体の水として結露します。
もし空っぽの20リットル燃料タンクだったら、水が12.5グラムの1000分の20、つまり0.25グラムなので0.25ミリリットル発生してしまうわけですね
燃料キャップの構造
燃料キャップは、実は重要な部品です。
燃料のフタ、に変わりはないんですが、ただフタをしているだけでなく、燃料タンクの圧力を調整しています。
気温により燃料が蒸発してタンクの圧力が高くなった時は、バルブを開けて燃料蒸発ガスを逃す
逆にタンクの圧力が下がりすぎた時は、バルブは外の空気を取り入れて圧力減少を抑えています。
キャップを回し続けるとカチカチカチッと音がしていくと思いますが、これはラチェット機構になっていて締まりすぎるのを防いでいるからそういう音が出るのです。
どんな環境だと水がたまるのか
換気、断熱、除湿できる環境ならば水はたまりません。
ですが、燃料タンクではそれができません。
ガソリンは引火しやすく危険ですし、蒸発してしまうので、換気するのは危険、タンクを断熱しろ、と言っても、車体底面に剥き出しです(断熱材で包めば違うかもしれませんけど、気温が高い時はそれがタンクの冷却を邪魔して燃料の蒸発を進めてしまうかもしれません)
除湿も、除湿機をつけるわけにいかないですし、ちょっと無理っぽい…
じゃあ、結露しない環境に車を置くしかありません。
1年通して気温差が少ない環境に車を置くのと、常に燃料タンクを満タンにしておくしかないでしょう。
予防法
水を予防するには、あとは水抜き剤を使うしかありません。
それと、燃料を満タンにすることです。
水抜き剤、使用するのはこんな時
- 今の新しい車(タンクが樹脂製)の場合で、以下の症状の時
走行中に急にエンジン出力が落ちてガタンガタン、とガス欠のような不調を起こす
- 古い車(タンクが鉄製)
投入時期としては、
- 結露が起こりやすくなる(気温が下がる)冬のシーズン手前
- 梅雨のシーズン手前
- 水抜き剤を一度も入れたことがなく、かつ年式が古い場合(不調が起きてなければ入れなくてもいい)
がいいでしょう
水抜き剤は適切に使うことで効果がある
ということで、ガソリンスタンドで勧められても、そんなに頻繁に使うものではないので注意しましょう。
使いすぎるとアルコール濃度が高くなりすぎて、ゴムの部品を傷めますのでご注意あれ。
あと、ガソリン用とディーゼル用があるので、燃料の種類に合ったものを使ってください(潤滑剤が入っているかどうかの違いがあります)