ガソリンスタンドが減っていますね。
車離れ、経営環境の悪化、高齢化などの原因がありそうです。
ここで、身近なガソリンスタンドについて考えてみます。
元売り(大手3グループ)、中間事業者、小売事業者
石油の販売業者は、石油元売大手3グループを頂点に、精製はできないが販売が大きな中間事業者、その下に小売事業者、という構造になります。
石油元売は
- JXTG
- 出光・昭和シェル
- コスモHD
の大手3社グループ体制になりました。
石油元売の歴史は合併を繰り返してきた歴史になりますが、現在は3つに絞られた形です。
ガソリン需要は減少しているのに、製油所の再編は進まず、ガソリンなど燃料の供給能力は、販売量を20%以上上回る供給過剰です。
石油元売り全体では、販売しきれないほど、燃料を作る能力がある!
大手の石油元売の下に、商社などの中間業社があります(大量仕入れと販売力が特徴)
そして小売業者(零細業者が多い)
という構造です。
スタンドが減っている
一方で、スタンドは減り続けています。
高度成長期からスタンドは増え始め、ピークは1994年、60000店舗あまりに及びます。
その後、スタンドは減少していき、2017年10月に30000店舗を下回り、ピーク時の半分以下になります。
(2019年には29000店舗を下回る)
地下タンク問題
危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成22年総務省令第71)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件(平成22年総務省告示第246号)
が平成22年6月28日に公布され、平成23年2月1日から施行されています
埋設後40~50年を超えたタンクは、油漏れを防ぐため内面を繊維強化プラスチック(FRP)で加工するか、地下に電極を埋め込み電流を流すことで腐食を防止する対策が義務付けられました。
この対策費だけならばまだそんなに費用はかからないようなのですが…
老朽化したタンクの入れ替えには3000〜4000万円かかる!
補助金等で一部を賄ったとしても、自己負担額は1500万円を超える、とされます。
そして、ガソリン1リットルを販売した際の小売業者の利益は、というと、だいたい5〜8円ほどだそうですから…
軽自動車を満タンにした時が20リットルだったとしても、1台100円ほどの利益にしかなりません。
1500万円捻出するにはガソリンを300万リットル、軽自動車15万台分給油しないとムリ
ということになります。
15万台って…365日営業して1日に50台だったとしたら、約8.22年
8年間休みなし
これは…
言葉を失いますね…
なお、歴史を追ってみると、
1996年 ガソリン輸入自由化
1998年 異業種参入解禁、セルフスタンド解禁
2010年 消防法改正
と、ガソリンスタンドをめぐる状況は年々厳しくなる方向に動いていたことがわかります。
ただ、追い討ちをかけたのは、2010年の消防法改正です。
高度成長期の1960年にできたスタンドの場合、ちょうど50年目が2010年ですから、いくら安全のためとはいえ、スタンドをわざと締め上げるために作ったんじゃないか、とさえ思えてしまいます…
小売業者の構成
小売業者の7割は1つの給油所だけを運営する零細業者です。
そして、ガソリンスタンドの98パーセントは中小企業です。
家族経営で、あるいは1人で切り盛りしているガソリンスタンドが多そうですね。
ますます状況は厳しそうです。
ハイブリッド・電気自動車、低燃費車の台頭
そして、もう一つ、ハイブリッド車が売れていますよね。
プリウスは現在、新車販売で1位だったりします(2019年の年間販売台数12万5587台)
さらに、電気自動車が今後、増加していくだろうと言われています。
そうでなくても、普通のガソリン車の燃費は年々上がっています。
スタンドが生き残るには
そもそもガソリンは、どこで入れても製品は同じです。
一般の自動車小売店も、車を製造できないから同じようなところがありますが、違うのは中古車をいわば「製造」することができる点です。
中古車は、そのまま乗れる状態の車と、修理が必要なものに分かれます。「製造」と言っているのは、まさに古い車のレストア、下取り車を手入れして乗れる状態にすることを含みます。
この要素があることで利幅を増やすことができますが、スタンドではガソリンを作り出すことはできず、販売することしかできません。
差がつくところ
スタンドに残された道は、利便性しかない!
ガソリンスタンドはガソリンを入れるのに便利かどうか、それがほとんどだ、といえます。
逆を言えば、差がつくところが他にないから、中小零細スタンド事業者は熾烈を極める環境に置かれている、ということことになります。
今後はどうする
スタンドの経営環境は悪化していますが、生き残るにはどうしたらいいのでしょう?
複合施設化
いまある施設は当然活用して、さらにスタンドの利便性を高めればいいんじゃないでしょうか?
現在よく見かける例 コンビニ併設スタンド
確かに、買い物もできてとても便利ですよね。
場所によってはガソリン割引券までくれるところだってあります。
異業種参入
こういう業態があるのならば、異業種からスタンドに乗り込んでくることはないのでしょうか?
いや、ありそうですよね。
考えられるだけでも、
- スーパー、ホームセンター
- 大手商社
- ガス燃料業者
- ディーラーなど自動車販売会社
- 郵便局
- 通信業者(今後の配車サービスと関連)
このあたりは資本もあるし、店舗も多く持っているので、やろうと思えばスタンドを始めてもおかしくないでしょう。
補足
ガソリンスタンド並に多い店舗数の業種
日本における業種別店舗数を示しておきます。
大まかな店舗数
- ガソリンスタンド 29000 店舗
- 喫茶店 70000 店舗
- 酒屋 62000 店舗
- 外食産業 58000 店舗
- 薬局 57000 店舗
- コンビニ 53000 店舗
- クリーニング 114000 店舗
チェーン化されていることですぐ思い浮かぶのはコンビニです。
買い物ついでに給油、というイメージからすれば断然、コンビニが有力です。
あとは、一息ついでに、ということでファーストフード、コーヒーショップ、外食チェーン店に併設、といったところでしょうか
何が言いたいのか、というと…
コンビニがスタンドを始めるのではなく、スタンドがコンビニを始める方がハードルが低そうな気がします。
スタンドが異業種展開したらどうなんでしょう?
一定の資金融資などの仕組みを作って、小売業者にコンビニ業を行うことを促す、
スタンドの減少を食い止められる、
小売業者も石油元売りも、地域住民も、みんな喜ぶ!
と思うのですが…
問題があるとすれば、参入するとき、スタンドと他の業種の施設を併設しないといけないので、新たな工事が必要だ、ということでしょう。
まとめ
スタンドを取り巻く環境は厳しさを増す一方です…
やはり、あとはこの冬の時代に耐えられる体力を持ったところだけが生き残る、という構図が見え見えです…
生き残りさえすれば、スタンドが全体で減るのだから、残存者利益で旨みがあるのかもしれませんが…
無くては困るガソリンスタンドです。
なんとかして生き残ってもらいたいです。
がんばれ、ガソリンスタンド!
応援してます。