クルマで得する話あれこれ since January 6th, 2020

クルマのブログ

ギヤ比とは何か トランスミッションの話

2020年2月9日

ちょっとイメージしづらい話ですが、これも重要です

ギヤを使って減速することでトルクが変わる

エンジンを回すと、一定の出力が得られます
そして、エンジンの特徴から、
低速回転なら低出力
高速回転なら高出力
となります

トランスミッションは、

エンジンの出力が低い場合は回転数を下げてトルクを増やす(力を上げる)ため、

エンジンの出力が高い場合はトルクを抑え回転数を増やす(スピードを上げる)ため

にあります

具体的には、ギヤを組み合わせて減速させることで行います

エンジンが作った回転を、変速機を使い減速させることで、トルクを上げることができます
変速機はトルクとスピードの関係を調整する機関、「てこ」のようなものです

なお、ここでトルク、回転数という時、
エンジンで作られた元々のトルクおよび回転数と
変速機を介したあとのタイヤを回すトルクおよび回転数をごっちゃにしないで下さい

また、変速機があろうがなかろうが、エンジンで作られた以上の出力にはなりません
変速機があいだに入ることで変わるのは、
回転数とそのトルク(力の量)の配分です

トルク、回転数、出力の関係

出力 = トルク ×  回転数
トルク = 出力 ÷ 回転数
回転数 = 出力 ÷ トルク

出力が同じなら、回転数を落とすとトルクが増える、というイメージですね

出力10、回転数10、トルク1のとき、

回転数5だとトルクは2

5 × 2 = 10

車が進む上でトルクが必要な時

エンジンで作られた回転数を変速機を使って落としてあげれば、最後にタイヤが回る時のトルクが上がる、ということです(タイヤの回転数が減るので、スピードは上がらない)

車が進む上でスピードが必要な時

エンジンで作られた回転数を変速機を使って上げてあげれば、最後にタイヤが回るときの回転数が上がって、車のスピードは上がります(タイヤが回るときのトルクは小さくなる)

変速機がないとどうなるか

出力の調整はエンジンのトルクと回転数のみでダイレクトに行うことになりますが、これでは問題があります

停止状態からの始動時

もし変速機がない場合

エンジンはトルクが必要なので、大きなトルクを出すためにエンジン回転数を大きくしなければならない(エンジン回転数が上がればトルクも上昇するから)
ところが、エンジンをいくら回しても、始動に必要なトルクまでは足りない

変速機で適切に減速すれば…

トルクを出せるので車を効率的に発進させることができる

おなじエンジン回転数を維持したまま変速機で半分に減速する場合
変速機が無い場合
エンジン回転数10 タイヤを回すトルクが1だった場合
変速比2なら
エンジン回転数10 変速後回転数5 タイヤのトルクは2

つまりトルクが2倍になる

スピードに乗った走行時

もし変速機がない場合

エンジンは回転数を上げる必要があるが、トルクも同時に上がっていく
多すぎるトルクはこの場合必要ない

変速機を使えば…

タイヤの回転数を元より増やすことができるので、タイヤを多く回せる

変速機が無い場合

エンジン回転数10 エンジンのトルク= タイヤを回すトルク=1 タイヤ回転数10の場合

変速比0.8なら
エンジン回転数10 変速後回転数12.5
つまりタイヤ回転数1.25倍、トルクは変速後0.8倍
なので、エンジン回転数を変えずにタイヤを多く回せるのでスピードが上がる

必要に応じてシフトチェンジすれば、エンジンをうまく使って車を制御できることになります

具体的に

ホンダアクティ(軽トラック)の場合 4WD車の変速比
1速 4.545
2速 2.500
3速 1.680
4速 1.133
5速 0.810
後退 4.300

減速比 前3.272後6.230

メーカーカタログより

https://www.honda.co.jp/ACTYTRUCK/common/pdf/actytruck_spec_list.pdf

変速比って?

変速比 トランスミッションでのギヤ比

各シフトでの、エンジン回転数(入力側)とタイヤ回転数(出力側)の比

減速比 デファレンシャルでのギヤ比

トランスミッションで変速した後の回転数(入力側)とタイヤの回転数(出力側)の比

総合減速比

変速比 ×  減速比
(一般に減速比、という場合、この総合減速比の意味で使っていることが多い)

これらの比は、数値が大きいほど減速するのでトルクは入力側に対し出力側が大きくなるが、回転数が少なくなるので速度が出なくなる

※デフ(デファレンシャル)とは

エンジン出力を、左右のタイヤに適切に振り分ける機構
車は曲がったりする時、タイヤ左右の力配分を変えた方が都合がいいのでデフがついている
(FF車には前部のみ、4WD車には前後部についています)

ここで、デファレンシャルは構造上、比率を変更することができません
運転の際はギヤ比の操作ができるシフトチェンジで、実質的に減速の度合いを調整していますね
ということで、アクティでシフトごとの変速の度合いをざっくり計算してみます

出力 = トルク × 回転数
トルク = 出力 ÷ 回転数

エンジン回転数(入力側)を仮に一定、トルクも一定だったとする

デフを考えず、変速後回転数(出力側)とトルクだけが出力を反映するとした場合、

1速
変速後回転数は入力の0.22倍 5速の回転数の0.18倍
トルクは入力の約4.5倍、   5速のトルクの約6倍

2速
変速後回転数は入力の0.4倍 5速の回転数の0.32倍
トルクは入力の2.5倍、   5速のトルクの約3.1倍

3速
変速後回転数は入力の0.6倍 5速の回転数の0.48倍
トルクは入力の約1.7倍、  5速のトルクの約2.1倍

4速
変速後回転数は入力の0.88倍  5速の回転数の0.72倍
トルクは入力の約1.3倍     5速のトルクの約1.4倍

5速
変速後回転数は入力の1.23倍  回転数1倍とする(基準)
トルクは入力の約0.8倍    トルク1倍とする(基準)

後退
変速後回転数は入力の0.23倍  5速のトルクの5.348倍

エンジン回転数を変えないのに、減速するだけでトルクと回転数がだいぶ変わりますね

スタート時はトルクが必要

もし、回転数が低い状態でもエンジンに十分なトルクがあれば、変速機はいらないのですが、残念ながらエンジンは始動時、車を発進させるほどのトルクがありません

もしそうしたいなら、排気量を非常に大きくしないといけなくなってしまいます
なので、変速機というテコを使ってトルクを調整している、というイメージですね

車を始動するのに減速してトルクをこれだけ多くしないといけない、ということは…

もし変速機がなかったら、4〜5倍の出力が必要だった、ということなので、相当エンジンを大きくしてトルクと回転数を稼がないと、車は動かない計算になります

結論

変速機のおかげで効率的な力の配分ができる