前回のおさらい
道路が持つ問題点
- 供給過少
- フリーライダー
- 需要測定が困難
- 政治過程で決められる
フリーライダー問題から供給過少がどうしても起こってしまうわけですが、これは徴税のことになると思いますので、省略します
では、道路はどうやってできるのでしょうか? ズバリ、
道路は、政治過程で決定され、建設されます
そして、道路は道路計画が無いと作られません
道路建設の主体は、行政です
営利企業が私的に作る公の道路、というものは存在しません
それは、道路が公共財だからです
道路の建設コスト
国道整備1キロメートルあたりの建設費
国道8号見附バイパス(新潟県)約17億円
国道17号熊谷バイパス(埼玉県)約24億円
国道176号宮津バイパス(京都府)約20億円
国道435号桃木バイパス(山口県)約9億円
みちのあれこれサイト より
http://www.dc.ogb.go.jp/road/michiarekore/kurashimichi/zatugaku/tukuru/tukuru03.html
なお、高速自動車道(普通区間)の建設コストは1キロメートルあたり約40億円
アクアラインの建設コストは1キロメートル当たり約710億円です
土地の価格が高かったり安かったりと言う違いはあるにせよ、一般国道1キロ作るのに目安として最低10億円はかかるんですね!
高速道ならその4倍!
それが一体何キロ続くのか…道路建設にはお金がかかります
道路の維持コスト
平成31年度国土交通省道路局の道路関係予算は総額1兆9346億円です(臨時・特別の措置を含む)
そのうち、維持修繕費用は4000億円程度、
日本の国道の総延長距離は75185km(2017年)高速道路含む
ちなみに、
日本の道路の総延長距離は1279511.9km(2017年) 市町村道まで全て含む
約128万キロ、地球1周が約4万キロですから、地球32周分と同じくらいの距離です
道路維持費は 4000 ÷ 1279512 ≒ 0.00313
0.00313 × 10000 = 31.3
1キロメートルあたり維持費は31.3万円です
ただし、交通量の少ない市町村道も含めた道路全体で割った数字です
私的に道路を作れるのだろうか?
これをみると、おそらく、自宅までの通路が限界です
お金がかかりすぎます
個人ではとても道路は維持できないですよね
仮に3桁違えばなんとかなるかもしれませんけど、3桁スケールが違う世界というのは、およそ1000倍違います
お金では無いのでこの比較は無意味かもしれませんが…
3桁違う世界とは、生き物の世界なら、人間に対して大きさ2mmくらいの昆虫の世界との違い、になります
昆虫1匹で人間には対抗することは不可能ですね
どう考えても、個人で道路を作るのはムリです
法人なら…
ちょっとこういうことを考えるのは現実的じゃないので、やめておきます…
道路ができる手順
道路はこうした順番で作られます
道路計画
- 交通量調査などによる交通量の把握
- 道路網整備計画
- 比較路線の設定、比較検討
- 概略計画の決定(最適路線の選定)
- 都市計画決定
事業執行
- 事業着手
- 測量、設計、買収、工事
- 道路の供用開始
道路の維持管理
- 維持・補修
大まかに言うとこんな流れになります
道路をめぐる法律
道路法、建築基準法など
建築基準法上でいう道路の考え方
- 建築基準法上の区分
- 都市計画法・土地区画整理法等の区分
- 道路法上の区分
道路に関しては、考え方が1つではないようです
ただ、道路幅などについてはだいたい同じことが書かれているようです
所管する省庁の違いで、道路に関する法律もいくつかある、ということですね
ここでは、道路法と都市計画法における道路の規定について考えます
道路法
第一条 この法律は、道路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、もつて交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的とする。
としています
つまり、道路を作る際の路線の指定・認定も、管理の仕方も、道路の構造も、管理保全の仕方も、費用の負担区分も、すべて法律で項目が決まっている、ということです
道路区分
道路法で想定している道路
- 高速自動車国道
- 一般国道
- 都道府県道
- 市町村道
の4つです(管理する行政の区分と費用の割合がそれぞれ違う)
この道路法とは別の法律を根拠として作られる道路
- 農道や林道など
- 里道 公衆の通行する道路でありながら、道路法上の道路ではない、法定外の公共物である道路のこと(私道は該当しない)
- 私道
建築基準法上の区分
道路とは原則として4m以上の幅の道であるとしながらも、4m未満であっても一定の要件をみたせば道路となり得ることとしている
都市計画法により開発許可を受けた道路は「開発道路」という扱いになるが、その道路の所有者がすべて地方公共団体となるわけではなく、公用に供されないと判断されると私道扱いになったりする
道路が作られるときの根拠となる法律
都市計画法
道路計画を基に作られる道路のこと
それ以外
都市計画法により開発許可を受けていない道路
つまり、面積や事業主体や区域や目的などの規定を満たさない道路のこと
つまり、車が通る一般的な道路というのは都市計画法に基づいて作られている、ということです
道路計画って何?
道路計画とは、都市計画法に基づいて作成される道路に関する計画のこと
都市計画を大まかに分類すると
- 土地利用に関する計画(市街化区域及び市街化調整区域、用途地域など)
- 都市施設に関する計画(道路、都市高速鉄道、駐車場、公園、下水道など)
- 市街地開発事業に関する計画(土地区画整理事業など)
都市計画の提案ができる主体
- 地方公共団体
- それぞれ一定の条件を満たす土地所有者、民間事業者、NPOなど
2003年から、都市計画提案制度が取り入れられ、地方公共団体以外にも都市計画の提出ができるようになりました
都市計画はどうやって決定されるか
都市計画決定手続きは主に2つ
- 関係する他の公共団体との協議
- 住民等の意見の反映
住民等の意見を反映させる方法として、都市計画案に対する公聴会と、住民や利害関係人からの意見書の提出、などの方法がある
道路事業執行
住民の合意が得られ、都市計画が決定されたら、以後、道路計画に沿って説明会を開いたり、測量をしたり設計をしたり、用地買収をしたり、となります。それが済んでからやっと工事が始まります
まず計画ありき
ということなので、道路を作るにはまず計画ありき、ということがわかります
計画がなければ、道路は作られないし、関係するそれぞれの機関を考えると、むやみやたらに作られているわけではない、ということもわかります
まだまだ道路は必要なのか?
では、道路はまだ必要なんでしょうか?
確かに提出された都市計画の分だけ、道路が必要だ、というニーズがある、ということにもなりそうですが…
ただ、問題になるのは、都市計画道路も、地域のニーズを完全に反映できない運命にある、というところです
冒頭の公共財が持つ問題にもある通り、道路を含む公共財はその建設に住民の100%の合意はあり得ません
その合意の割合をどこに持っていけたら良しとするか、それを見極めるしかないです
道路特定財源が一般財源化された背景
道路特定財源は、道路整備にお金が足りない、ということを踏まえて、道路を利用する自動車ユーザーから徴収されていました。
廃止に至った経緯として、
- 道路が一定の水準まで建設されたこと
- 納税者間の不公平の是正
- 国の財政が厳しくなってきた
などがあります
無駄な道路があるのか
地域振興の手段が道路建設だ、ということになっていたから、というのもあるでしょう
道路を作ればまず、公共事業なので雇用が増える、道路ができれば車が通って人・モノの移動が活発になる、さらに道路が繋がれば経済効果が高くなる、など
ということで一石三鳥にも四鳥にもなったのが道路だった、ということになるでしょう
ですが、国の財政が厳しくなったということにもあるように、道路への予算配分を見直す時期が来ていた、ということです(道路特定財源の廃止)
では、無駄な道路があるのか
誰にとって無駄?
経済性で無駄?
難しい問題です
地方においては道路特定財源が廃止されたことで、道路整備の財源が減少し、道路整備に悪影響が出た自治体もあるはずですが…
最低限、道路建設後の事業評価はきちんと行われないといけないでしょう
まとめ
思ったのですが、
行政における無駄の問題は、そのゴールの設定がまず難しそうです
だから、無駄と言い切れない
それでも無駄をなくすには、
とにかくうまく民意を反映するしかない、ということじゃないでしょうか?
あと、道路は細分化された自治体で独自に作るより、全体として大きな行政単位で作った方がより良い道路計画ができるんじゃないかな、と思いました
逆に、行政単位が大きすぎると民意が反映されない、という問題が出ますが…
道は車が走るものですが、車はどこにいくのか、を考えた場合、出発地と目的地があるわけで、だったら、道路ってただ単独で作るわけにいかないんじゃ無いか、と思うのです
いわば、道路という目的地への過程を作っているのであって、目的地を作っているわけでは無い
自治体同士でお互いに連携して、「じゃあ、ウチにも得になるから協力します」と言う動きはあるのかどうか?
無いなら、道路行政だけ広域化して、全体計画を作った方が、より良い道路、無駄のない道路ができるんじゃ無いか?
そんなことを思いました
市民は住民税で地域にお金を払っています
道路はそういったお金で作られますので
自らの意思を反映し、より良い社会を作るためにも
政治に参加しましょう
よい道路は、よい政治から