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クルマのブログ

なぜ内燃機関にはガソリンが使用されているのか

2020年1月18日

エンジンの燃料にガソリンが使われているのは何故か?

こんなそもそものことについて考えてみます。

本題に入る前に、私が整備振興会で習った良いエンジンの3つの要素があります。

それは、


 良い混合気、良い圧縮、良い火花

以上の3つです。

  • 良い混合気 理論空燃費
  • 良い圧縮 圧縮されていた方がよく爆発するから、エンジンとしては圧縮漏れがないこと、圧縮率が高いこと(高すぎるとノッキングが起こるので適度に高いこと)、バルブタイミング
  • 良い火花 火花が強いこと、タイミング

いわば、エンジンはいかにうまく爆発を起こして発生させた気体によりピストンを押し下げるか、に尽きるわけです。


エンジンに求められるのは、それを達成することです。

適切にガソリンと空気が混じった気体が、エンジン内部でうまく圧縮されて、そこに火花が飛んでくれればうまく爆発するよ、ということですね。

現在の車がコンピューターを積んだりセンサーをたくさん付けているのも、この爆発をうまく制御するためです。

逆を言えば、センサーが壊れるとそのうまさを維持できない、という弱点に繋がるわけですが…

さて、本題です。

エンジンが開発されるようになったその昔、なぜ燃料にガソリンが使われたんでしょう?

まず、現行のガソリンエンジンから紐解きます。

高効率化のため、すなわち大型化しないで高出力を得るためには高い圧縮が必要だった!

 以下、原理になります。

(略)
オットーサイクルの理論熱効率は圧縮比と比熱比のみで決まり、圧縮比または比熱比を大きな値に変更すると熱効率を向上させることができる
大阪工業大学HPより
https://www.oit.ac.jp/japanese/voice/eng/detail.php?id=201408001

   圧縮比とは 内燃室の最大:最小容量比のこと
   比熱比とは 定圧熱容量と定積熱容量の比
    比熱とは 流体の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量のこと
    定圧比熱とは 圧力を一定に保ったまま、温度をセ氏1度上昇させるのに要する熱量
    定積比熱とは 容積を一定に保ったまま、温度をセ氏1度上昇させるのに要する熱量

  定圧比熱Cp

  定積比熱Cv

  比熱比κ
  κ=Cp/Cv

すなわち、気体は温度によって状態が左右される、ということですね

そして、 気体の圧力が一定なら、体積と温度は比例する(シャルルの法則)
     気体の温度が一定なら、圧力と体積は反比例する(ボイルの法則)

シリンダー内部での機体の温度、圧力、体積の関係は、

  圧縮する→圧力上昇、体積減少、温度上昇
  膨張する→圧力低下、体積増加、温度低下

気体の圧力は体積に反比例し温度に比例する(ボイル=シャルルの法則)

ガソリンとの混合気を圧縮していくと、圧力が上がり、体積が減り、温度が上昇します。

圧縮比を上げすぎると、今度は自己着火、という現象が起きます(ノッキングのこと)

熱損失も増えてしまいます。

圧縮比を下げすぎると、パワーが得られません

圧縮比を上げる利点=熱効率が上がる

熱効率とは仕事量を熱量で割ったもの
同じ仕事量なら、熱量が小さい方が高効率、
ならば、限られた燃料でパワーを得る(仕事量を増やす)には、燃料を少なくし、同時に熱の温度をなるべく高くすればいい

(燃料が少ないから燃えたときの熱量は少なく、温度が高いと燃焼効率が上がって熱効率が上がる。少ない燃料で仕事量を増やすためには燃焼効率をあげればいい)ということですね。

温度を上げるには圧縮すればいいから、圧縮比を上げると高効率になり、その結果、仕事量が増えるので高パワー、ということです。

つまり、圧縮する理由は、燃料の節約と温度を上げるため、それを通じて熱効率を上げるためにあった、と言えます。

比熱比を上げる=燃料を少なくする

酸素や窒素に比べて、燃料ガスである炭化水素は比熱が大きい
  空気 常温付近で1.0J/g・℃程度
  石油 常温付近で1.7J/g・℃程度

燃料が多ければ多いほど、比熱の大きい気体が増えるので、全体として混合気は暖まりにくくなるため、比熱が上がり、比熱比は下がってしまいます(比熱が大きい=温まりにくく、冷めにくい、比熱が小さい=温まりやすく、冷えやすい)

燃料を薄くすれば、混合気の比熱は下がり、比熱比は上がります。

まとめると、
圧力と体積は反比例していく(圧縮すればちっちゃくなる)
ここで効率よく出力を得るためには 圧縮比を上げ(高圧縮)、燃料を薄くする(高比熱比)
 なぜなら、高圧縮なら圧力上昇、温度上昇、熱効率上昇
そうすることで、機械を大型化しなくても高出力を得られる

ということになります。

もちろん弊害もあって、

    圧縮しすぎると 自己着火(ノッキング)を起こして最悪エンジンが壊れる
         熱の損失が増える


 燃料を薄くしすぎると 燃焼温度が上がりすぎてバルブが溶ける、エンジン壊れる

なので、エンジンが壊れない程度に燃料を薄くするのがエンジンを作る時のカギ、ということです。

今の車は、良い混合気のために、さまざまな値をセンサーで拾ってコンピュータで計算し、その時にあった燃料の度合いを決めています。

また、バルブタイミングを変えることで膨張比をコントロールしてロスを減らしたり、バルブをコントロールして空気の流入量をコントロールしたりもしています。

これを制御するために、コンピューターを積んで、センサーをたくさん付けているんですね。

原動機の歴史と特徴

エンジンの歴史編です。

     1712年 ニューコメンにより実用になる最初の蒸気機関製作
なお、産業革命は1760年ごろ、イギリスから起こった、とされる

     1769年 ワットにより効率のよい蒸気機関が作られる
     1804年 トレビシックにより蒸気機関車が発明される
    都市ガス(石炭ガス)の発達により、ガスによる外燃機関が発明される 
     1876年 オットーにより4サイクルガソリンエンジンが発明される
     1878年 クラークにより2サイクルガソリンエンジンが発明される
     1893年 ディーゼルによりディーゼルエンジンが発明される
     1957年 ヴァンケルによりロータリーエンジンが発明される

外燃機関の特徴として、

燃焼ガスを直接作動流体として用いない

機関外部の熱源により機関内部の気体を加熱して膨張させることで熱エネルギーを運動エネルギーに変換する(つまり、燃焼ガスを直接作動流体として用いない)

内燃機関の特徴として、

機関内部の熱源により発生させた燃焼ガスを膨張させることで、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する

燃焼ガスを直接作動流体として用いる

歴史的には、小型化が難しく、パワーウエイトレシオ(重量÷出力)が低い外燃機関から内燃機関へ、という流れ

内燃機関はいずれも、シリンダー内で発生させた燃焼ガスの膨張で動くものだ、ということですね。

ガソリンの特徴

ガソリンは常温において無色透明の液体で、揮発性が高く、臭気を放つ。主成分は炭素と水素が結びついた、炭素数4 - 10の炭化水素の混合物で、密度は一般に783 kg/m3である。硫黄や窒化物などの不純物が含まれているが、製品にする際は脱硫などの工程により大部分が取り除かれる。

引火点は-40℃以下で、常温でも火を近づければ燃焼する(なお、灯油の引火点は約50℃)。

灯油もガソリンも発火点は約260℃であまり差がないのに、引火点には大きな差がある。

ということで、ガソリンは極めて揮発性が高い、ということから、内燃機関に採用された、というところでしょうか。

シリンダー内に噴射されればすぐに気体になりますし、燃えやすいわけですね。

その特性が、ガソリンエンジンにはうってつけだった、と言えそうです。

まとめ

素朴な感想ですが、エンジンの設計の元となる原理について、当たり前のようでいて、案外知らない部分が多くありました。

自然法則は奥深いものですね。